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【干物の歴史】
aji水産物を保存する方法として最も簡便な製品であり、古くから作られてきたのが干物で、縄文時代の貝塚からも干物づくりの道具が出土している。
最古の記録としては、奈良時代の『正倉院文書』に記載されており、小魚の丸干しを「きたひ(漢字は月へんに昔)」、魚の内臓を除いてから干したものを「あへつくり(月へんに粛)」、魚肉を細く切って干したものは「すはやり(楚割)」と呼ばれ、神に捧げる貢物「神饌」とされている。
平安時代には干物を「からもの」と言い、酒宴に欠かせない肴として、『源氏物語』にも、貴族が興じた宴の酒肴として登場する。

【干物の製造方法】
干物の製造として一般的な方法は以下のとおりである。内臓を取り除かないいわし(マイワシ)の丸干しなどは、原料魚を塩水漬けしてから、真水洗いでウロコを取って(イワシなどは、氷水に漬けておくとウロコが剥がれてくる)乾燥させる。

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干物づくりの製法について
干物を作る際の技法として、塩漬けの仕方、乾燥の仕方の2つの工程に特徴があり、生産量や魚種等によって組合せが異なる。
塩の効果としては風味としての塩味とともに、魚肉中の水分を引き寄せることで身を引き締めることやタンパク質の凝集により、ムチッとした食感が産まれること。ただし、塩の種類には精製塩や岩塩、海水塩など色々なものがある。どちらがいいかは一長一短であり、不純物としてにがりなどが多いものは、味わいしょっぱくは無いが、異味などを感じるようになることもあり、精製塩により純粋な塩味を好む加工業者も多い。
乾燥による効果としては、水分を減らすことで旨味を濃縮させること、生鮮魚よりも保存を長くできることなどがあるが、現在の干物は水分を2~5%低下させている、殆ど鮮魚と同じなので、冷蔵あるいは冷凍保存をする必要がある。

【塩漬け方法】
開きや丸干しにする際に、魚に塩を効かせることで、魚肉タンパク質の重合によって焼き魚とは異なる食感をもつようになる。最近では漬け塩に用いる塩水に、お茶(カテキン:脂肪の酸化防止、臭いを防ぐ効果がある。)、ハーブ(臭みを防ぐ)、酒(少量のアルコールが風味を強化させる。)などを添加している加工品も見られる。

―振り塩法―
撒き塩とも呼ばれ、開いた魚に手で塩をまんべんなく、味わいとしてしょっぱくない程度に振りかける。一般には鮮魚店での製造や、加工場でも少量の生産分のみこだわりの製品として用いられている。
味わいとしては最高級品が生産されるが、振り塩の際に塩加減を一定にすることに技術が必要であること、塩が振られていない魚肉部分が発生すると、その部分が腐敗を起こしやすく、品質としての安定性が弱い。

―立て塩法―
大量生産する場合、塩水に漬け込んでから干す方法がとられている。干物の産地である沼津では、15~18%塩水に10~15分程、魚の種類や脂の量に関係せず漬けて干す。小田原では10%程の塩水で、魚の大きさ(身の厚み)、脂の多さにより10~30分程漬けてから干す。

※漬け塩法には、塩はにがりなどの成分が少ない精製塩などが適している。
※開きならば骨のある片身が塩が入りにくい。入りきらないとバサバサした食感の身となり、特徴のある瓦状に身が凝固しない。
※身の中心まで塩が入るようになると、表面がとてもしょっぱいので、数秒ほど真水で汚れの洗いと、塩分を抜くことをする。


【乾燥方法】
-天日乾燥-
天日干しとも呼ばれる最も古い製法で、太陽光を利用して水分を蒸発させる乾燥法である。ただし、天候に左右されやすいこと、紫外線による油の酸化が促進されること、高温による肉質の品質低下が大きいことなど、大量生産の現場では使われなくなっている。
また、道路のアスファルトや砂、ゴミなどが付着しやすいこと、食衛法では内陸部での天日干しによる製造については、ホコリとして粉塵などが付着することから、禁止している。
ただし、旨みや香りを強く感じて美味しいと感じやすいなどの研究報告もあり、生協等では天日干し製品を望む声も大きい。

―機械乾燥―
干物加工の現場で最も広く利用されている乾燥方法である。以前は短時間で製造できる温風乾燥という、室温から魚肉が煮えて変色しない50℃程度の温風にて、原料の水分を蒸発させていた。
しかし、現在では冷風(10℃~30℃)の除湿空気を乾燥室内で循環させ、蒸発を促す冷風乾燥が主流です。低温で製造できるので、魚肉成分の変化が少なく、分解物による酸味などの発生が少なくなっています。

―文化干し(灰干し)―
開いた魚や切り身に、水蒸気の透過性が高い多孔質セロファンで包み、乾燥した灰に埋めて脱水する方法である。空気に蒸発させる乾燥とは異なり、表面を含めて全体の水分の拡散移動により、全体を均一な水分含量に調整できます。
また、空気や太陽光にさらされないことから、脂質の酸化や外観的な色彩の変質が少なく、ホコリ等のアレルギーのあるお子さんに推奨できる製品となっています。
近年は乾燥灰に変わってシリカゲル等を利用したり、脱水シート(ピチットシートなど)を用いて製造されます。

【干物の種類】
一般的な干物に作られる魚種として、あじ、さば、いわしなどの他、かます、いぼだい、さんま、イカなどがある。近年では高級魚として、アマダイ、キンメダイ、キンキのほか、地域性が強く現れるかれい類、メヒカリ、ゲンゲなどの製品も見られる。
あじの干物に使われる原料魚は、マアジ、マルアジ(通称アオアジ)、ムロアジなどがあるが、現在では殆どがマアジとヨーロッパマアジ(昭和50年代以降利用)が主流になっている。
干物には、ウロコだけを取った魚や内臓を取った魚の“丸干し”、つけ汁に醤油、醤油と味醂や砂糖を使う“醤油干し”や“味醂干し”、煮たものを干す“煮干し”“焼き干し”“一夜干し”

【干物の生産量と機械化について】
干物の生産について“あじの開き”を例として説明する。あじの開きについては年間5~6万tが生産され、静岡県が全体の約4割を占めており、千葉県、神奈川県、茨城県、三重県が主な産地となっている。
昭和40年頃から乾燥機による製造が始まり、安定した製造が可能になったこと、昭和45年頃から干物も冷凍流通されて安定した品質で流通されるようになった。
ちなみに、現在のアジの開きは腹開きであるが、古くは頭を残した背開きである「小田原開き」が全国で作られていた。それは、武家社会の影響であり、頭を割ることは兜割り、腹開きは切腹を連想するためであった。
しかし、水産加工機器のフィレマシーンの登場により、1分間で100尾以上もの開きを生産できるようになったが、その開き方が腹開きであった。機械化が進んだときには、マアジの干物に関して沼津が全国の8割もの生産を誇っていた。

【干物の選び方】
よいものとは!!
◆開きが全体を見て丸みを帯びて厚みがあると、肉付きや脂ののりがよい。
◆色つやがよく、光沢があって、魚肉に透明感があるか。ただし、脂がのったものは乳白色になっている。

◆油焼け(脂肪の酸化)で黄色く変色したり、異臭がでてないか。
◆自己消化によってドリップが垂れたり、変な臭いがないか。
◆品質が低下することで、腹骨など身と骨が遊離していないか。
◆凍結乾燥などにより皮や尾がカラカラに干からびていないか。

【調理法のコツや料理】
◆美味しく食べられる目安として、製造後は、冷蔵保存で4日程、冷凍保存(-18℃保存)で2、3週間以内(脂肪は-80℃でも酸化が進みます)。
◆干物を焼くときに網にサラダ油を先に塗り、干物の皮にはお酢を薄く塗ることで、焦げつきにくくなる。
◆皮の方に脂がのっているため、皮の方から7分焼き、身側は焙る程度で3分焼く。
◆カレイはあらかじめ包丁で切れ目を入れておくことで、焼くことによって骨からとても身離れがよい。

【銘産品】
◆でべら(素干品)
原材料:タマガンゾウビラメ、産地:広島県

◆カマスの開き:旬は夏から秋
原材料:ミズカマス、アカカマス、産地:富山県、神奈川県ほか

◆くさや:旬は春と秋(漁獲時期)
原材料:ムロアジ、クサヤムロ(アオムロ)トビウオ
産地:伊豆諸島、伊豆半島

◆ニギスの干物(丸干し):旬は春と秋(漁獲時期)
原材料:ニギス、産地:富山県ほか

◆あまだいの塩干品:
原材料:アカアマダイ、産地:長崎を中心とした西日本

◆かれいの塩干し
原材料:ソウハチ、ヒレグロ(北海道)、メイタガレイ、ヤナギムシガレイ、ヒレグロ(福井県)、ソウハチ、ヒレグロ、アカガレイ(兵庫)、ヤナギムシガレイ、ムシガレイ、メイタガレイ、ソウハチ(島根県)、ヤナギムシガレイ、ムシガレイ、メイタガレイ(福岡県、長崎県)、産地:島根県(全体の半分ほど)、兵庫県、鳥取県、北海道など

◆塩ぶり
原材料:ぶり、産地:富山県、石川県、新潟県など

◆ふぐ干物(一夜干し)
原材料:シロサバフグ、クロサバフグ、カナフグなど、産地:山口県、福岡県、長崎県ほか

◆げんげ干物
原材料:ノロゲンゲ、産地:石川県、富山県、新潟県

◆いか丸干し:旬は初夏
原材料:小形のスルメイカ、産地:新潟県

◆ハタハタ干物
原材料:ハタハタ、産地:日本海沿岸

【豆知識】
-干物づくりの格言-
「干物は風で干せ」と言われる。つまり、干物は大陽の熱で干しあげるのではなく、風で魚肉中の水分を少なくし干しあげるとのことである。
これは、大陽の直射日光で干すと魚体が煮えてしまい、筋肉内の成分が分解されることにより乳酸が生成されて酸っぱくなったり、脂が酸化して黄色く変色するからである。
ちなみに、目が赤いのはよくないと言われるが、漁獲時や水揚げの際に眼球内に出血したものであり、魚肉の品質とは関連は少ない(ぶつけていたら身に出血や軟化部位がみられる)。

―干物の表と裏―
焼き魚を器に盛るときは、左側を頭部にして、手前側にお腹となるようにし、それが焼き魚の表となります。
干物については、皮側を上にしたり、開いた側を上にしたりと、飾り方が様々でどちらが表か裏か分かりません。ですが、加工品や調理の基本として、人が手を入れた側がその技術や美しさを表す側となります。つまり、開いた側が表となります。


最終更新 (2010年 3月 26日(金曜日) 13:39)

 
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